古九谷の五彩手や、人気の赤絵細描、近代の名称が生み出した上絵技法など、九谷焼にはいろいろな技法・様式があります。
作家や窯元の数だけ作風があると言われるほど、その表現方法は多岐に渡ります。
ここでは、代表的な九谷焼の画風や様式、技法を紹介します。
古九谷とは初期の九谷焼のこと。
大皿に描かれていた古九谷の上絵を、豆皿に落とし込んだものや古九谷の様式にならって絵付けしたものなどを古九谷風とよんでいます。
九谷五彩(緑、黄、紫、紺青、赤の5色)を用いて花鳥風月などが描かれたものや、青手と称される緑、黄、紫の3色または紺青を加えた4色で描いた様式があります。
古九谷風の器は、その魅力を現代の暮らしの中で楽しめるとあって人気です。
江戸時代後期の名工・青木木米の画風です。
赤の背景に中国風の人物を書き込んでいるのが特徴的。
人物の表情や仕草がなんとも愛らしい。
木米は、今も人気のモチーフとして現代の九谷焼でもよく見られます。
古九谷の青手様式を継承した画風。
青手とは、緑・黄・紫・紺青の4色を用い、まるで油絵のように塗り埋めて描く様式。
豪放な古九谷の青手に対して、吉田屋の青手は洗練された雰囲気があると言われています。
そんな吉田屋風のデザインは、華やかな中にも品があり、現代の食卓を素敵に彩ります。
飯田屋もしくは八郎手は、今も人気の赤絵細描のことです。
赤絵細描とは、その名の通り、ごく細い線で赤絵を描く様式のこと。
細かな線で連なるように描かれた文様や絵は、まさに超絶技巧で美しい。
赤絵に金彩をあしらい華やかなものも素敵です。
金襴手とは、下地を赤で塗り埋めた背景に金彩のみで文様を描く技法。
江戸時代後期に、京の永楽和全が九谷焼に根付かせたと言われており、金襴ての様式名は永楽とよばれています。
赤地に金の文様が浮かぶ金襴手は、ゴージャスで気高い。
縁回りや取っ手など金蘭手をポイント使いした器も素敵です。
明治時代に活躍した九谷庄三という陶工の画風です。
古九谷、赤絵細描、金襴手、金彩など、九谷焼のありとあらゆる加飾手法をたくみに取り入れた上絵は、豪華絢爛。
食卓を華やかに彩り、ハレの日にもふさわしい器です。
白磁に藍色の絵付けのみが施されたもの。
九谷五彩を使った色絵とはまた違った、奥ゆかしい美しさや趣を感じます。
染付は、素焼きの素地に呉須という顔料で描き、呉須は焼き上げるとキレイな藍色に変化。
盛り付けた時に料理が華やぐのも、染付の器の魅力です。
絵はなく、釉薬の透明感で魅了する彩釉。素地全体にかけた釉薬は、焼成するとガラス質に変化し、器の表面に美しいツヤが生まれます。
色の濃さが異なる釉薬を塗り分けることで、色のグラデーションを作り出すことも。
この彩釉の技法を追求した三代徳田八十吉は、「彩釉磁器」で重要無形文化財保持者に認定されました。
青は今でいう緑色のこと。緑の和絵具を盛り上げるようにして小さな点を描く技法です。塗りでもなく、線でもない。
点の集合体が、見事な世界観を繰り広げます。
小さな点を同じ大きさで、かつ集合体としての美しさを出せるのは、高い技術がないと難しい。
粒が小さければ小さいほど、職人の技が優れている証。
青粒以外にも、白粒や金粒もあります。
花や葉っぱなどの形にかたどった金箔を器に貼り、その上から釉薬をかけて焼きあげる技法。
釉薬の透明感と金箔の煌めきがあいまって、とても美しい。
この釉裏金彩は、金沢の竹田有恒が考案。
さらにその技法を研究・発展させたのが、重要無形文化財保持者に認定されている吉田美統です。
銀箔で模った模様を器に貼り、その上から釉薬をかけて焼き上げた技法。
中田一於(なかたかずお)が確立した技法です。
普通、銀は空気にさらすと酸化して黒く変色してしまいます。
しかし釉薬で覆うことで酸化を防ぎ、銀箔はキレイなまま。
控えめな輝きは、洗練された美で魅了します。
読んで字のごとく、花々を敷き詰めた上絵の技法。大正時代に九谷焼にもたらされたと言われていています。
九谷焼では主流の和絵具ではなく、洋絵具で描かれる花詰。
埋め尽くすように花々を描き焼き上げ、さらに花々の輪郭を金彩で縁取り、再度焼成して完成します。
花々の彩る豊かな色彩と、金彩の艶やかさが美しいハーモニーを奏でています。
厚く塗り上げる和絵具に対して、洋絵具で描かれたものは、九谷焼では「薄絵」と呼ばれ、様式・技法の1つに数えられています。
極細の筆を用いて、古今和歌集といった古典文学を流麗に書く技法。
小山清山が明治末期に確立した技法。
一子相伝の技法とされ、その技を引き継いだ4代目の田村星都(たむらせいと)の作品は、常に人気です。
整然と連なる文字は、拡大してみても、毛筆の書のように美しいです。
(写真:田村 星都 細字三十六歌仙和歌唐草文香爐)
九谷焼では明治以降に用いられるようになった、人や仏、動物、縁起物などを陶磁で作り上げる技法。
その製造工程は、粘土で作りたい形を彫刻で作り上げ、それを元に石膏で型を起こし、型に土を入れて成形します。
その後、素焼き、本焼き、上絵付け、焼成を経て完成。型を作ることで量産が可能に。
造形の見事さと上絵の華やかさ、その両方を楽しむことができます。